前回までのコラム【大腸ポリープ(1)(2)】で大腸ポリープの一般的なお話をしてきました。今回は大腸ポリープの診断に関して書いていきたいと思います。
目次
●大腸ポリープの診断はどうやって行っているの?
●大腸病変に対する内視鏡による質的診断能は?
●拡大内視鏡検査は大腸病変の質的診断に有用か?
●画像強調検察を併用した拡大内視鏡観察は大腸腫瘍の診断に有効か?
大腸ポリープの診断はどうやって行っているの?
いままでポリープは大きく腺腫性ポリープと過形成性ポリープに分けられるという話をして来ました。もちろん、これらの良性腫瘍だけではなく癌などの悪性腫瘍も診断しなくてはいけません。では実際のポリープや癌をどうやって診断しているのでしょうか。
一つ目は内視鏡診断です。難しい言葉ですが、要はカメラで観察した見た目での診断です。
まず術者はカメラで大腸の中を観察していき、通常の粘膜ではない「何か」を認識しますよね。で、この「何か」がポリープなのか癌なのか、それ以外なのかをまずは見た目で推測し、見た目の診断をつけます。例えば「腺腫だろうな」とか「癌の可能性が高いだろうな」などと考えています。
次に、確定診断を行うには病理検体が必要です。ですので、ポリープを何らかの方法で切除したり生検をしたりします。採取した検体を通常病理医が顕微鏡で診断し、この結果で確定診断となります。このことを病理学的診断といいます。では一つ目の内視鏡診断ってどれくらい当てになるのでしょうか?
大腸病変に対する内視鏡による質的診断能は?
簡単な言葉に言い換えると、大腸病変をみつけた時に、見た目で性質をどれくらい正確に診断できているの?という話しです。
これまでの内視鏡診断の歴史で様々な方法や技術が新しくなってきました。昔と比べると、診断に使用できる「武器」が増えてきたイメージです。昔は内視鏡画像も粗かったですが、どんどん性能が良くなって、腸管の中を鮮明に観察できるようになってきました。
昔ながらの観察方法としては、「通常内視鏡検査」といってそのまま見ることと、「色素コントラスト法」というものがあります。この項ではこの2つの方法の説明を行います。色素コントラスト法とは、粘膜にインジゴカルミンをいう液体を散布して観察する方法です。簡単に説明すると、人体に影響のない絵の具を腸に塗ることで、病変の高さの違い(凹凸)や表面の模様の違いをわかりやすくすることで、病変の評価をします。
大腸病変で出会う事が多い、腺腫と過形成性病変の鑑別は5mm以下の小さな病変でも、「色素コントラスト法」を併用すると75〜88%鑑別可能とする論文があります。
腺腫と、進行癌の診断はできても、腺腫の中に一部癌が混じっている場合などは鑑別が困難なことも多くあります。
このような時に更なる診断の武器として「拡大内視鏡検査」や「画像強調観察」というものもあります。次の項ではこの「拡大内視鏡検査」についてお話します。
拡大内視鏡観察は大腸病変の質的診断に有用か?
拡大内視鏡観察とは、大腸の表面にある微細な構造(模様)を観察することです。1993年に顕微鏡が搭載された内視鏡が発売されたことで、拡大内視鏡観察が行えるようになりました。
通常内視鏡観察に拡大観察(pit pattern診断)を加えることで、その感度・特異度・正診率が約5〜10%程度向上効果があるという報告があります。
なので、質的診断のゴールデンスタンダードはピオクタニン染色による拡大観察ということになります。
ただ、拡大観察を行うためには、大腸の表面をピオクタニンという液で染色する必要があります。ピオクタニン染色というのは少し時間がかかります。個人的には見つかったポリープすべてに対して、ピオクタニン染色を行って質的診断を行うのは非現実的と思っています。
画像強調観察を併用した拡大内視鏡観察(NBI拡大観察)は大腸腫瘍の診断に有効か?
歴史的にはピオクタニン染色による拡大内視鏡の後に、画像強調観察という方法がまた出てきました。
画像強調観察とは、これまでの内視鏡診断と異なり、特殊光を使用します。するとこれまでの通常光では観察できなかった、病変の表面に観察される毛細血管や微細な粘膜模様などを強調して描出することができます。これによってポリープの質的診断(非腫瘍性ポリープか腫瘍性ポリープかの鑑別)を行うことが可能となるので、以前よりよりスムーズかつ詳細に診断できるようになりました。特殊光にするのは、内視鏡についているボタンを一つ押すだけなので非常に簡単で瞬時にできます。
さらにこの画像強調観察に加えて拡大観察もできるようになりました。この観察方法により、大腸腫瘍の質的診断に有用なことが報告されました。
現時点ではこの画像強調画像はほぼすべての内視鏡に標準装備されています。ただ拡大機能が搭載されている拡大内視鏡は限られています。
当院で使用しているカメラは画像強調観察を併用した拡大内視鏡観察ができるようになっており、すべてのポリープに対してこの観察方法による質的診断を行っています。
※これまでは論文での話しをしましたが、実臨床では“検査を行う内視鏡医の「眼」の良さ”も加味されると思います。カメラでは病変がキレイに写っていても診断出来たり、認識できなくては何の意味もありません。内視鏡医はたくさんの病変と出会い、勉強会などで勉強することで診断能力を上げる努力を行っています。
まとめ
●大腸ポリープの診断は見た目による「内視鏡診断」と、組織をとって行う「病理学的診断」がある。
●通常観察+「色素コントラスト法」で、腺腫と過形成性病変の鑑別は小さな病変でも、75〜88%鑑別可能
●質的診断にはピオクタニン染色による拡大観察がゴールデンスタンダードで、通常観察よりも正診率が約5〜10%程度向上する。
●画像強調観察を併用した拡大内視鏡観察(NBI拡大観察)は簡便に大腸腫瘍の質的診断に有効である。
文責 副院長 下河辺嗣人(消化器病専門医、消化器内視鏡学会専門医)
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