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2021/01/20
〜大腸の知識⑦ 大腸ポリープ⑴〜

前回までで便潜血検査大腸内視鏡検査についてお話していきました。今回からは大腸カメラを行った時によく出てくる用語、例えば“ポリープ”や“癌”などがありますが、一体何でしょうか。この辺を説明していこうかと思います。

 

目次

●ポリープって何?

●大腸ポリープの分類は?

●大腸ポリープって癌になるの?

●無症状で50歳を超えるとどのくらい頻度で腺腫が見つかるのか?

●腺腫で癌化しやすいのはどのようなポリープか?

そもそもポリープのサイズってどうやって測っているの?

ポリープって何?

“大腸ポリープ”という言葉を一度は耳にしたことはあると思います。大腸ポリープと癌というのはどのような関係になっているのでしょうか?大腸ポリープというのは、「大腸内腔に向かって限局性に隆起する病変で、組織学的には良悪性を問わない」と定義されています。

つまり、大腸の内側に盛り上がった病変をすべて表現する言葉です。言い換えれば形を表す言葉です。「組織学的には良悪性を問わない」というのを簡単に言うと癌などの悪性でも良性のものもどっちも含むということです。たまにポリープと言われると“良性”と思い込んでおられる方も見かけますが、ポリープは良性だけとは限りません。良性のことが多いことは確かですが、癌の一部も含まれていることに注意して下さい。あくまで形を表す言葉ということを頭に入れておいて下さい。

大腸ポリープの分類は?

形ではなく、病理学的な組織型で分類されることがあります。病理や組織学的などという言葉は「性質」を表すものと思って下さい。

ここからは少し難しくなります。

通常型腺腫、鋸歯状ポリープ、ポリポイド腺癌、炎症性、過誤腫性、間質性、リンパ組織性、内分泌性、その他に分類するとされています。ポリープのほとんどが、通常型腺腫(管状腺腫、管状絨毛腺腫、絨毛腺腫、平坦腺腫)と鋸歯状ポリープ(過形成性ポリープ、sessile serrated adenoma、混合型ポリープ、traditional serrated adenoma)になると思います。

大腸カメラ検査を行ってポリープを切除された場合には、そのポリープ1つ1つに、この病理結果がついてきます。興味がある場合は、その結果を担当医に確認してみるのも良いでしょう。

 

大腸ポリープって癌になるの?

前述したとおり、大腸ポリープは「形」を表す言葉でしたね。ここでいう“大腸ポリープ”とは言われる良性ポリープに関しての言葉と認識して下さい。

良性ポリープは大きく、腺腫性ポリープと過形成性ポリープに分けられます。

いずれもこの時点では良性です。

今後、特に腺腫という言葉はよく出てくるので覚えておいて下さい。

腺腫性ポリープは、徐々に成長して癌化する可能性があります

過形成性ポリープは大きくならない限り癌化しません

 

大腸癌の発生ルートには2種類あると言われています。

1つは正常粘膜からいきなり癌ができるルートで、このルートでできる癌を「de novo(デノボ)癌」と言われています。「de novo」とは「はじめから」という意味です。

もう一つはまず腺腫というポリープができて、遺伝子変異が蓄積することで癌化するルートがあります。腺腫(adenoma)から癌(carcinoma)ができるので、このルートを「adenoma-carcinoma sequence」と呼びます。

de novo癌」と「adenoma-carcinoma sequence」のどちらの経路がどれくらい多いのかはまだはっきりしていませんが、最近では「adenoma-carcinoma sequence」が主経路であると理解されています。

 

なので、この質問の答えとしては、良性ポリープの中でも腺腫は癌化するということになります。

ただ、腺腫の時点できちんと治療しておくと、ほとんど大腸癌になることはありません。

 

では無症状で50歳を超えるとどのくらい頻度で腺腫が見つかるのか?

無症状の方に大腸カメラを行うと、腺腫は約30の人に見つかります。

ちなみに癌は約1%。過形成性ポリープは20%くらい。

有症状では腺腫は約50%が見つかります。

 

腺腫で癌化しやすいのはどのようなポリープか?

腺腫の癌化に関わるのは一般的には、大きさ、異型度などが言われていますが、その中でも特に大きさが最も重要です。

論文によって違いはありますが、径5mm以下での癌化率は0.4%、69mmでは3.3%10mm以上では28.2%という報告があります。

具体的には10mmを超えるようにポリープには癌化にしている可能性を念頭に入れる必要があると思われます。

 

そもそもポリープのサイズってどうやって測っているの?

胃カメラも、大腸カメラも実際の内視鏡画像にメジャーなどの計測する道具はついていません。ではどうやって病変のサイズを測っているのでしょうか。

実は、内視鏡医は一人一人自分の「頭の中の定規」を持っているのです。「頭の定規」を作成するには何百例、何千例と病変を見て、切除した病変を実際に測定したり、指導医の内視鏡の写真と所見を見たりして経験を積んでいきます。

一つの目安としてはスコープ自体の径や、鉗子といってデバイスによる測定もできるとされています。いずれにしても、内視鏡医の経験や「目」によって測定されていることを知っておきましょう。

 

長くなってきたので今回はここまでです。

次回はポリープの続きをお話させていただく予定をしています。

 

まとめ

●大腸ポリープとは大腸の内側に隆起した病変のことで、形を表す言葉です。

●いわゆる良性ポリープは大きく、腺腫性ポリープと過形成性ポリープに分けられます。

●良性ポリープの中で、腺腫性ポリープは癌化する可能性がある。

●無症状の人に大腸カメラを行うと約30%で腺腫が発見される。

●腺腫でも10mmを超えるものは癌化に注意が必要。

 

文責 副院長 下河辺嗣人(消化器病専門医、消化器内視鏡学会専門医)

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