前回のコラムで大腸の話しや、大腸癌の一般的な頻度などを説明しました。
今回は前回の続き、大腸癌の予防という意味での検診に関してお話していこうと思います。
目次
大腸癌検診って有用ですか??
日本では大腸癌検診(症状がない方に対して行う検査)には便潜血検査がよく使用されています。
検診に便潜血検査を行うことで大腸がんによる死亡率が減少することが示されています。
便潜血検査は40歳〜80歳で有効であるといわれています。また大腸癌死亡率および罹患率は40歳代から上昇することから大腸癌検診は40歳から開始するのがよいと考えられています。
大腸癌検診ってみんな受けてるの?
残念ながら受診率はかなり低いです。
日本医師会が出しているデータによれば、大腸癌検診の40〜69歳の方の受診率は、男性は44.5%、女性で38.5%です。
もっと皆さんに検査を受けていただくことで、大腸癌が減っていくことを期待したいところです。
便潜血検査って何?
便潜血検査は便に血液が混じっていないかを診断する検査です。
大腸癌が発生すると、下部消化管内で出血することがあります。そのため採取した便に血液が混じっていれば、がんの恐れがあると判断することができます。
この検査では特殊な抗体を用いて便表面の血液を検出する(免疫学的方法)ので、出血量が少なくてもがんのリスク診断が可能です。
免疫学的方法は、ヒトのヘモグロビンに対する抗体を用いています。そのため豚や牛、魚類の血液には反応しません。また胃酸や胃・膵液由来の消化液によってヘモグロビンが変性(形が変わる)する上部消化管出血は検出しません。
下部消化管、大腸での出血を診断します。
日本では2日法(便を1日に1回ずつ、2日にわけて採取する方法)が用いられています。
便潜血検査のメリットとデメリットは?
メリット:来院せずに検査を受けることができる。大腸内視鏡検査など他の大腸がん検診の検査の中では、検査費用が安い。便を取るだけなので、身体的な負担はない。等があげられます。
デメリット:潜血反応が陽性でも癌かどうかの診断はできない。潜血反応が陰性でも癌ではないと言いきれないことです。
便潜血検査にかかる必要は?
便潜血検査にかかる費用は、受診方法によって異なります。会社の健診で実施する場合や自治体で実施している検診であれば、年齢によっては無料もしくは補助があることが多いです。自治体によっては制度を設けていないケースもあるので、お住まいの管轄する自治体のがん検診ホームページやがん検診窓口に問い合わせて下さい。
ちなみに当院がある奈良県大和高田市では、対象が「大和高田市に住民票がある年度内に40歳以上になる方」となっており、単独検査では自己負担が800円、特定健診とセット受診の場合は500円で検査を受けることができます。また保険事業料が免除になる方もおられますので奈良県大和高田市のホームページを確認して下さい。
人間ドックや任意の医療機関で検査を受ける場合には自由診療(全額自己負担)となります。おおよそですが、自費の場合の費用は1000円〜2000円くらいが一般的で、(医療機関によって異なります。)任意での医療機関での受診となります。便潜血検査だけ受診したい時には、受けたい医療期間が個別に対応しているか確認が必要なので、まずは問い合わせが必要です。
なぜ便は2日とるのか?
家庭での自己採便では、一般には検査回数を増やせば感度(実際癌の人が検査した時に陽性であった人)は増加しますが、特異度(癌でない人が検査をした時に陰性であった人)が減少して偽陰性が多くなることがわかりました。そのバランスを考慮して、2日法が用いられることになりました。
(1日法、2日法、3日法で大腸癌に対する感度が、それぞれ56%、83%、89%であり、1日法と2・3日法で有意差がみられた。特異度はそれぞれ97%、96%、94%で3日法が1・2日法より有意に低かった。)
便を2日取るにはどうすればいいですか?
検査当日を含む、3日以内の便を提出します。つまり連続する3日間のうち1日1回、2日間の便を取る必要があります。「便秘で連日なんて排便がないよ」という方もおられると思います。そういった場合には、最初に採った便を冷蔵後で保管しておきましょう。室温が高い場所で保管していると、ヘモグロビン(検査で確認したい部分)が壊れてしてしまい正確な結果が得られなくなります。便を冷蔵庫に入れるのに抵抗がある場合は、直射日光を避けた25℃以下の涼しい場所で保管します。
なお、女性の方は生理中には採便できません。生理中に検査がある場合は、生理終了後3日程度期間を空けて検査を行って下さい。
便潜血検査の便はどのように採ればいい?
採便方法については、便内部よりも、表面の方が血液の存在している部位が多く、便の長軸方向になぞる表面擦過法が適切といわれています。便の表面をまんべんなくこするようにして下さい。採便用スティックの先端には溝があり、その溝を埋めるまで便を採取して下さい。便の量が少ないと検査が正確にできないことがあります。
キットに採便方法の説明が添付されているので確認して下さい。
また注意したいのは、トイレの洗浄水に便が浸かってしまわないことです。洗浄水には消毒液などが含まれていることがあるので、便が浸ってしまうと正確に判定できなくなってしまいます。
説明が長くなったので、今回は一旦終わりにして、次回も便潜血検査に関しての後半の説明していきたいと思います。
まとめ
●大腸癌検診としては便潜血検査がよく行われており、便潜血検査を行うことで死亡率が減少します。
●便潜血検査は便に血液が混じっていないかを診断する検査です。便を取るだけなので、身体的な負担はなく簡単な検査なので受けましょう。
●便検体の提出はできるだけ正確に行いましょう。
文責 副院長 下河辺嗣人(消化器病専門医、消化器内視鏡学会専門医)
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
08:00~12:00 | 副院長 | 院長 副院長 |
副院長 | 院長 副院長 |
ー | 院長 副院長 |
院長 副院長 |
ー |
15:00~18:45 | 副院長 | 副院長 | 副院長 | 副院長 | ー | 副院長 | ー | ー |