前回のコラムでは主に大腸ポリープの診断に関してお話していきました。
今回は大腸ポリープの治療に関して書いていきたいと思います。特に当院で行っているコールドポリペクトミーという治療方法の説明を中心にします。
目次
●内視鏡切除の方法は?
●Cold polypectomy(コールドポリペクトミー)とは?
●コールドポリペクトミーの適応病変は?
●コールドポリペクトミーの課題は?
内視鏡切除の方法は?
現在、ポリープや早期大腸癌に対して行われている内視鏡治療の方法は何種類かあります。
内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的ポリペクトミーなどが実臨床ではよく行われているのではないでしょうか。難しい名前が付いていますね。
切除する病変が“癌”と“癌以外”では少し考え方が異なるので今回は、いわゆる「癌以外の良性ポリープ」に対する治療に関して説明します。
実際に当院でも行っている内視鏡的ポリペクトミー(コールドポリペクトミー)を中心に説明します。
Cold polypectomy(コールドポリペクトミー)とは
これまで説明してきた通り、ポリープの中でも「腺腫」を切除することで大腸癌の発症が予防されることは証明されてきました。
従来はポリープを切除する場合は、高周波電流という装置を用いて焼灼しながら切除する方法(要は焼きながら切除する)が主流でした。しかし、電流で焼きながら切除するので、出血したり、穿孔(腸に穴があいてしまう!)のリスクがありました。そこでコールドポリペクトミーという切除方法が考案されました。コールドポリペクトミーとは通電せずにポリープを切除する方法です。先ほどの通電する方法を、通電するので“ホットポリペクトミー”なんて言い方をすることもあります。コールドポリペクトミーは通電しないので“生切り”のイメージでポリープをブチッっとちぎってきます。
コールドポリペクトミーのメリットは①切除後の出血や穿孔のリスクが極めて低いこと②検査・治療時間も短縮化できることがあります。
そのために、以前の切除方法よりも切除した後の生活制限も少なくなるので患者さんも喜ばれています。このようなメリットが大きいので、近年急速にコールドポリペクトミーが普及しています。
じゃあポリープは全部この方法で取ればいいじゃないかと思われると思いますが、そうはいかないです。なぜでしょうか。次にどんなポリープならコールドポリペクトミーで切除していいかを説明しましょう。
コールドポリペクトミーの適応病変は?
まず答えから書くと、①癌を疑う病変でないこと ②10mm以下の茎がない病変であることです。
なぜこのような縛りがあるのでしょうか?
①癌を疑う病変でないことの理由としては、切除した病変が癌であった場合に病理学的評価を行うことが難しいからです。要するに「きっちりと癌がすべて取りきれているかどうかわからない」からです。
②10mm以上の茎がある病変は出血リスクが高いからです。
この2つをふまえて、当院では画像強調観察を併用した拡大内視鏡観察(精密検査)にて「癌でないこと」を確認して、確実で安全な治療を行っています。
逆に「癌の可能性がある」病変や有茎性病変に対してはEMRやESDといった通電して焼きながら切除する方法が必要になるために、治療可能な施設にご紹介させていただいています。
コールドポリペクトミーの課題は?
コールドポペリクトミーの検体は薄くて小さいことが多いので、検体が回収できないことがあります。(回収不能病変が10%程度みられる)検体が回収できないということは、病理学的な診断ができないので、採取した病変が実際何であったのかの答え合わせができません。
あとは病変の完全切除率が低い(「断端」といって、病変の端っこが評価できずに完全に取れているかわからないものが67%程度。また不完全切除(病変が残っているもの)が3.9%程度)とも言われています。
また、この方法は近年になって普及し始めているため、長期の成績(再発のリスク)がまだ十分ありません。今後、データの蓄積していく必要があります。
まとめ
●内視鏡切除の方法は、内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的ポリペクトミーなどがある。
●コールドポリペクトミーとは通電せずにポリープを切除する方法
●コールドポリペクトミーのメリットは①切除後の出血や穿孔のリスクが極めて低いこと②検査・治療時間も短縮化できることです。
●コールドポリペクトミーの適応病変は?①癌を疑う病変でないこと②10mm以下の茎がない病変であること
文責 副院長 下河辺嗣人(消化器病専門医、消化器内視鏡学会専門医)
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