長くなりましたが、今回で大腸内視鏡検査の話しは一旦終わりです。ではいきましょう。
目次
・大腸内視鏡検査後の注意点は?
・血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合は大腸カメラできるの?
・良い大腸カメラとは?
大腸内視鏡検査後の注意点は?
当院ではご希望された方には麻酔薬を使用しています。麻酔薬を使用すると判断力・注意力・運動能力を低下させ、飲酒後に似ている状態となります。当院では事故防止を目的として、麻酔を行った患者様に対して検査当日は自動車・バイク・自転車等の運転は禁止させていただいています。(検査予約時に麻酔を使用することがわかっている場合は公共機関をご利用いただくか、送り迎えをお願いいたします。)
食事に関しては、腸内を観察しただけなら特に制限はなく、食事も何を食べていただいても結構です。
ポリープを切除したり、生検(組織を取った)を行った場合などは、検査当日のみ飲酒や刺激物の摂取は避けていただいています。また激しい運動もしないで下さい。入浴せずにシャワー程度にしていただいています。
飲酒も運動も入浴も血流が良くなることで出血の原因になるとされているので、禁止しているというわけです。
あとのコラムでも説明する予定ですが、当院で行っているポリープ切除はcold polypectomy(コールドポリペクトミー)といってほとんど出血しない方法で行っています。
上記は当院での方法になります。病院によって方針が異なりますので、検査・治療をされた後は注意点をよく確認するようにして下さい。
血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合は大腸カメラできるの?
近年、脳梗塞や心筋梗塞になった後に再発防止などの意味合いで血液をサラサラにする薬を飲まれている方をよく拝見します。大腸カメラ検査を行う際にこのような薬を飲んでよいのかどうかを説明します。
以降は血液サラサラの薬のことを“抗血栓薬”と表記していきます。
近年になって、「内視鏡診療における消化管出血リスクよりも、抗血栓薬の休薬に伴う血栓・塞栓症のリスクが高い」と言われてきました。
簡単にいうと、出血よりも血栓塞栓症の方が予後に関わり、血栓塞栓症にならないことがより重要ということです。
基本的に“観察のみ”であれば抗血栓薬を1剤だけ飲んでいても休薬の必要はありません。また生検(組織を取る)の場合もほとんど大丈夫です。しかしワーファリンやDOACという抗凝固薬に関しては少し制限があります。
当院でも大腸ポリープに対して行っているcold polypectomy(コールドポリペクトミー)という処置も生検と同様とされています。
例外として、出血リスクが高い処置を行う可能性がある場合や、抗血栓薬を1剤ではなく、多剤内服されている場合には、事前に内視鏡施行医師と抗血栓薬の処方医が相談し、休薬が可能かどうかを確認する必要があります。どの薬をいつから(検査の何日前から)休薬するかは、ガイドラインに沿って医師が決めます。まれに自己判断で、薬を中止して検査を受けに来られる方がおられますが、これは危険ですのでやめて下さい。
患者様が認識しておく大切なことは、「どのような内視鏡検査・処置を行う予定で」、「何の為にどんな抗血栓薬を飲んでいるか」を把握しておく必要があるでしょう。それを検査する病院でお伝えしていただければ、後は施行医(病院やクリニック)や処方医が判断して準備を進めます。
当院では、検査の予約の時にどのような抗血栓薬を内服しているかどうかを確認させていただき、休薬する場合は検査の何日前から辞めていただくか指示しています。
私が考える「良い大腸カメラ」とは?
いわゆる“良い”大腸カメラとはどのような検査なのでしょうか?
これまでの大腸内視鏡検査のまとめのようなものと考えて下さい。
これは僕の私見ですが、大きく3つあると考えています。
①苦痛なく楽に検査を受けることができること。
まずは検査を受けていただかないと何も始まりません。“痛いという噂を聞いた”とか、“実際痛かった”などの経験があると「一度検査を受けてみよう、もう一度検査を受けよう」という気がなくなってしまいます。当院では、出来るだけ楽に検査を受けてもらえるような検査を心がけています。具体的には麻酔薬を使用する、痛くない挿入方法を用いる、送気は二酸化炭素を使いお腹の張りを軽減するなどを行っています。
②しっかりと観察でき、適切に診断し、治療方針を立てることができる。
せっかく頑張って検査をうけてもらっても、観察できていないと全く意味がありません。まずは腸内をしっかりキレイにし、観察する条件を整えます。観察するにあたり、当院では“色素内視鏡観察”や顕微鏡を搭載したカメラで行う“拡大観察”を併用して病変を認識し、適切に診断するように心がけています。何度も検査を受けるのは大変なので、治療可能な病変はその場で治療するようにしています。ただし入院が必要な病変や、超音波内視鏡やCT検査などの詳しい検査が必要なものに関しては、その場判断して適切な病変へ紹介させていただいています。
③合併症がない安全な検査
当院で行うことが多いのは“検査”であり“治療”ではありません。(もちろん検査を行い、結果的に治療まで行うことはよくあります。)検査なのに合併症を起こすことは絶対に避けたいと考えています。安全に検査を行うことが最も大切なことではないでしょうか。ただし、どんなに慎重に検査を行っても一定の頻度で合併症を起こることは必ずありますが、その可能性を極力少なくする努力は必要です。
まとめ
●麻酔を行った場合、検査当日は自動車・バイク・自転車等の運転は禁止です。観察のみなら検査後に特に制限はないが、処置を行った場合は病院の指示に従いましょう。
●内視鏡検査を行うにあたり、「出血よりも血栓塞栓症の方が予後に関わり、血栓塞栓症にならないことがより重要」である。事前に内視鏡施行医師と抗血栓薬の処方医が相談する必要がある場合もあります。自己判断で、勝手に薬を中止して検査を受けるのは辞めましょう。なぜ・どんな抗血栓薬を飲んでいるのかを把握しておきましょう。
●私が考える良い大腸カメラとは、①苦痛なく楽に検査を受けられる②しっかりと観察でき、適切に診断し、治療方針が立てられる③合併症がない安全な検査です。
次回からは大腸ポリープについてお話していこうと思います。
文責 副院長 下河辺嗣人(消化器病専門医、消化器内視鏡学会専門医)
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