今回も前回コラム(大腸内視鏡検査(1))に続いて大腸内視鏡検査のお話です。
目次
検査自体にかかる時間は15分〜20分程度です。これは①カメラを肛門から一番奥まで入れる時間 ②奥からカメラを引き抜きながら大腸の中を観察する時間を合わせての時間です。
私自身の①の挿入の時間は概ね3〜6分かかることが多いです。ただし、挿入が難しい方もおられ10〜20分かかる時もあります。挿入時間は挿入する医師の技術で差があると思います。②の観察時間ですが、私は10分程度かけています。もちろん病変が何かあれば観察時間は長くなります。観察時間に関しては日本消化器内視鏡学会からでている「大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン」でも6分以上の観察が見落としを少なくなるので推奨されています。
さらに、病変を詳細に観察したり(色素観察や拡大観察)、ポリープを切除したりすると追加で時間がかかります。
前のコラムでも説明しましたが、前処置の時間も含めると半日〜1日かかりの検査と思っておいて下さい。
大腸カメラは苦しいの?
この質問は外来で本当によく聞かれます。ここはしっかり説明していきたいと思います。
私は大腸カメラの苦しさは3つに分けられると思っています。
①前回書いた「前処置」のつらさです。後述するカメラの挿入時の辛さよりも、この「前処置」の方が辛いと言われる患者様が多数いらっしゃいます。
②カメラを肛門から挿入して実際に観察や処置を行う時の苦しさです。
初めて検査を受けられる方はこの②をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
こちらに関しては“検査を受けられる人の腸の状態+検査を行う術者のスキル”によるのではないかと考えています。たとえば、お腹の手術をしていて腸と腸や、腸と他臓器がくっついていたりする“癒着”がある場合は痛みを訴える方が多い印象です。また腸炎がある時なども同様です。ここからは私の印象ですが、太っている方(腸管が逃げるスペースがあるので腸がたわみやすく、挿入が難しいことがあります)、小柄で痩せている方(骨盤内に腸が凝集されているイメージで屈曲が強く、挿入時に痛みがでやすい)、強い便秘の方(大腸が伸びてしまっていて挿入が難しい)なども痛みの訴えが強いことがあります。
次に、術者の技術の面も大きいと思います。大腸はアコーディオンのようになっていて、上手にカメラを入れないと、腸がたわんでしまったり(腸を伸ばしてしまっている)、ねじれてしまったりします。そうなると痛みが出ることが多いです。私たち内視鏡医は極力腸がたわまず、痛みが出にくいように細心の注意を払いながらカメラの挿入を行っています。そのためのコツの一つとして色々な体勢を取っていただくことがあります。左を下になる体勢で検査を始めますが、上向きになったり、右を下にしたり、時にはうつ伏せになっていただくこともあります。
さらにお腹を看護師さんに押してもらうことがあります。これは腸を手で押さえることで腸をカメラの先端に近づけたり、腸がたわまないようにするために行っています。患者様はできるだけお腹の力を抜いていただけると挿入がしやすくなります。
挿入法も様々なものがあり、軸保持短軸法や水浸法といった方法があります。詳細は専門的すぎるので割愛しますが、私は一つの方法ではなく色々な方法をを組み合わせて行うようにしています。
ただ、どんなに慎重に挿入しても、上手な先生がカメラを行っても、痛みがでてしまう場合はあると思います。そういった場合には、楽に検査を受けていただくには、麻酔薬を使うことをお勧めします。適切に麻酔薬を使うことでほとんどの方が極めて楽に検査を受けていただくことが可能です。
当院でも必要に応じて麻酔薬を使用しますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
③観察による空気によるお腹の張りによる辛さです。
腸の中をしっかり観察するために、腸の中に空気を入れて腸をパンパンに膨らませる必要があります。そうすることでひだとひだの間の隙間までしっかり観察できます。ただ、溜まったガスが原因でお腹が張ってきたり、お腹が痛くなったり、時には吐き気の原因となります。そのため、検査中でも入れた空気はおなら(ガス)としてどんどん出していただくのが一番です。ただ人前でおならをするのが恥ずかしかったり、中々出そうとしても出せない方も多くおられます。
当院ではお腹の張りを楽にするために空気の代わりに二酸化炭素を使用しています。二酸化炭素は空気と比べると吸収がかなり早いので検査後のお腹の張りはかなり軽減されます。
大腸カメラで使う麻酔薬ってどんなもの?
検査時の苦痛を少しでも軽減するために、ご希望があれば鎮静剤(ウトウトする薬)や鎮痛剤(痛みを減らす薬)を使用しています。
よく麻酔薬は全身麻酔ですか?というご質問をいただきます。本来、全身麻酔という言葉を使う場合は、意識がなくなり、鎮痛薬と筋弛緩剤を使う麻酔のことを言います。筋弛緩剤を使うので呼吸がとまりますので人工呼吸器が必要になります。病院の手術室で大きな手術を受ける時や、ドラマなどでもよく使われているイメージですね。内視鏡検査で使用する麻酔薬は、鎮静剤と鎮痛剤なので眠っていますが、呼吸は自分でされています。一般的にイメージする全身麻酔とは異なるものです。
大腸カメラの実際
前処置が終わると検査が可能になります。当院での方法を説明します。先ほど説明しましたが、麻酔薬を使用することがあります。これらの薬剤を投与するための点滴を行います。準備ができたら検査用ベットの上で左側を下にして横になっていただきます。その後、鎮痙剤や麻酔薬を点滴から投与します。鎮静剤とは腸の動きを止める薬です。挿入を行いやすくすること、腸の観察がしやすくなることから使用しています。
カメラを入れる前にゼリーをつけた指を肛門に入れます。これはゼリーを肛門に塗ることでカメラがスムーズに通りやすくするためです。
いよいよカメラを挿入してきます。カメラを挿入していく時は基本的には腸の中は観察していません。なぜかというとカメラを挿入していく時には大腸の中に空気を入れてしまうと腸がたわんでしまいカメラが進みにくいからです。
腸の一番奥(回腸末端から盲腸)までカメラを進めます。ここからカメラを引き抜きながら、空気を腸の中に入れて腸をパンパン張った状態にして中を観察していきます。最後に肛門までカメラを引き戻してきて、肛門の裏側を観察します。肛門の裏は引き抜きの観察では見にくいことがあるので、当院では反転といって直腸でカメラを折り曲げてみます。この時に痛みが出ることがあります。出来るかぎり腸の中の空気を抜いてきて検査は終了です。
まとめ
●大腸カメラの検査自体は15〜30分程度。前処置も含めると半日〜1日かかることもある。
●大腸カメラの苦しさは①「前処置」のつらさ、②カメラを肛門から挿入して実際に観察や処置を行う時の苦しさ、③観察による空気によるお腹の張りによる辛さに分けられる。
●大腸カメラで使用する「麻酔」は一般的な全身麻酔とは違い、痛みを減らす鎮痛剤やウトウトとする鎮静剤を使います。
文責 副院長 下河辺嗣人(消化器病専門医、消化器内視鏡学会専門医)
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
08:00~12:00 | 副院長 | 院長 副院長 |
副院長 | 院長 副院長 |
ー | 院長 副院長 |
院長 副院長 |
ー |
15:00~18:45 | 副院長 | 副院長 | 副院長 | 副院長 | ー | 副院長 | ー | ー |