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2020/10/31
ピロリ菌について⑤  〜治療編(後編)除菌後〜  

ピロリ菌について⑤  〜治療編(後編)除菌後〜

今回でピロリ菌に関するコラムには最終回になります。

ピロリ菌除菌後の対応など、どうすればいいのかをお話ししていきます。

 

目次

・ピロリ菌の除菌後の判定はいつ行う??

・除菌判定の検査方法は?

一次・二次除菌治療に失敗したらどうしましょう??

ピロリ菌ってまた感染しますか??

ピロリ胃炎の内視鏡診断と除菌後の変化

除菌後胃癌って何??

自費診療の基本と注意点

 

ピロリ菌の除菌後の判定はいつ行う??

除菌判定検査は、除菌治療後少なくとも4週間経過しないと行えません。

これは、除菌に偽陰性を防ぐためです。

当院ではより正確な判定のために、「除菌治療薬内服後、約8週後」を目処に検査を行っています。

 

除菌判定の検査方法は?

ピロリ菌判定には尿素呼気試験または便中ピロリ抗原検査が推奨されています。

ピロリ菌について②〜検査、診断編〜にも記載しておりますので、参考にして下さい。

 

なお、尿素呼気試験の結果でカットオフ値に近い5‰未満の時には直ちに再除菌はしないで、経過観察または便中ピロリ抗原検査で確認することが必要です。

 

一次・二次除菌治療に失敗したらどうしましょう??

一次・二次除菌療法が不成功となる症例は、除菌症例全体の3%程度とわずかです。さらに一次・二次除菌治療をボノプラゾンで行った場合は0.2%となり、三次除菌症例は稀となります。

三次除菌療法まで行うかどうかは主治医とよく相談してみて下さい。

知っておいていただきたいことは、三次除菌療法は保険適用外ということです。そのため治療や検査は自費になります。また確立されたレジメン(抗生剤の種類や量)もありません。

これまでの報告ではプロトンポンプ阻害薬+アモキシシリン+シタフロキサシンが最も有力なレジメンとされていますが、それでも除菌率は7090%です。

今後の安全で効果の高いレジメンの登場に期待されるところです。

 

ピロリ菌ってまた感染しますか??

A.することはありますが稀です。

除菌治療後の再出現には2つのパターンがあります。

除菌判定の偽陰性による、「再燃」と、除菌成功後の「再感染」です。

「再燃」は除菌してまだ生き残っていた菌がまた増えるイメージ、「再感染」は新しいピロリ菌が新たに増えるイメージでよいと思います。

実臨床で「再燃」か「再感染」か を厳密に鑑別することはほぼ不可能です。

一般的に、除菌治療後1年未満の再出現は「再燃」と考えられています。

再出現率は除菌後“1年以下”、よりも“長期”になる方が低くなります。

除菌後1年以下の再出現率は010%と報告されており、除菌後長期では03%程度とされています。

再出現率に関する報告は様々で、一般的に先進国では低く、発展途上国では高いと報告されています。また成人よりも小児で再出現の頻度が高くなるとされています。

再出現の除菌再治療では、再燃であるとクラリスロマイシン耐性の可能性が高くなるため、薬剤感受性試験を実施してから抗菌薬を選択することが望ましいとされています。

 

ピロリ胃炎の内視鏡診断と除菌後の変化

ピロリ菌を除菌することで内視鏡所見(内視鏡を行った時の見た目)が変わるといわれています。「びまん性発赤の消失」や「発赤域が散在する」(地図状発赤や斑状発赤と表現されます。)などがあげられます。

 

 

除菌後胃癌って何??

先ほどの項で、除菌を行うと内視鏡所見が変わることがあることをお話しました。

除菌を行っても、胃癌が発症することがわかってきています。(除菌を行うことで胃がんの発症率をおおよそ半分にできるとされています)

胃粘膜の萎縮が高度なもので発症しやすく、高齢者や男性に多いとされています。

除菌を行った内視鏡所見は病変が指摘しにくく(①まだらな色調や、背景粘膜の凹凸で病変を認識しづらい、②背景粘膜は平坦均一だが、病変に存在感がなく認識できない、③存在は明らかだけど拡大観察をしても病変を癌と認識できない)、診断が困難なことがあります。

大切なこととしては、除菌をしたら終わりではなく、内視鏡検査で経過をみていくことが必要です。

 

自費診療の基本と注意点

すべてのピロリ菌感染陽性者は保険診療の対象となっていますが、保険適用上の注意点と異なる診療を行う場合には自費診療の対象となります。

例えば、内視鏡検査を施行しないでピロリ菌感染診断を行うことは自費診療の対象となります。

具体的には、二次除菌まで失敗した場合に行う「三次除菌」や、薬剤アレルギーなどで、保険で認められたアモキシシリン(AMPC)、クラリスロマイシン(CAM)、メトロニダゾール(MNZ)3剤以外の抗菌薬を用いて除菌治療を行う場合にも自費診療の対象となります。

 

まとめ

・ピロリ菌の除菌判定は少なくとも4週間後に行う。

・ピロリ菌判定には尿素呼気試験が推奨されている。

・二次除菌に失敗した場合は三次除菌がある。三次除菌を行うかどうかは主治医と相談して下さい。

・ピロリ菌除菌後にピロリ菌が再出現することはあるが、極めて稀です。

・ピロリ菌除菌後にも胃がんができることがあるので、除菌をしたら終わりではなく、内視鏡検査で経過をみていくことが必要です。

 

文責 副院長 下河辺嗣人(消化器病専門医、消化器内視鏡学会専門医)

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